ペンギンオヤジの舌癌日記

舌癌ステージ3の闘病と母の介護についての記録

【書籍004】「さよならタマちゃん」武田一義:著

「さよならタマちゃん」の表紙



 

さよならタマちゃん

イブニングコミックス

武田一義 : 著

今回は、精巣腫瘍(せいそうしゅよう)という睾丸の癌を患った35歳の漫画家アシスタントさんが、自らの闘病生活を綴ったコミックをご紹介します。

このコミック、読むたびに発見や気付きがあって何度も何度も読みました!

一時は私にとって闘病生活のバイブル的なものになっていたくらいです。

内容は主に著者ご自身の入院生活を描いたものですが単なる闘病記ということだけでなく、

・逆境の中で生き抜く方法

・前向きに生きていくことの大切さ

・人と人との繋がりや絆など、

人生を歩んでいくのに大切なものがいっぱい詰まってます!

Amazonの内容紹介

いつか漫画家になる事を夢見て、漫画家アシスタントとして日々を暮らしていた35歳の主人公。そんな彼に突然襲ってきた癌という大きな試練。

睾丸の癌に冒され、片タマを失った主人公が、家族や他の入院患者との出会いをコミカルな絵でリアルに描ききる。

後が無いのはわかってる。でも諦めるには早すぎる!

夢を掴むための闘病記!

逆境こそがチャンス!

だる猫さんによる写真ACからの写真

35歳 マンガ家アシスタントの可能性・・・

正直、最近は自分自身 本気でマンガ家になろうと思ってやっているのか

なんらかの結論を出すことから 逃げているだけなのか

分からなくなっていた

マンガ家デビューを夢見ながら、ずるずるとアシスタントを続け、気づいたら35歳になっていた作者の武田氏。

 

それが、ガンになったことをきっかけに「ここから もう一度やり直す!」ことを決意し、病床でマンガを描き始めます。

 

退院後、自身の闘病記を描き上げ連載が決まり、マンガ家としてデビューを果たします。

 

そして•••

 

2017年の5月には「ペリリュー 楽園のゲルニカ」という作品で日本漫画家協会賞優秀賞を受賞するに至ったのです!

 

よく「逆境こそがチャンス」とか言いますが、私が思うに「逆境をチャンスにできるかどうかは、その人次第」だと思うんですよね。

 

(逆境に潰されてしまう人だっているのですから)

 

ガンの闘病記というシリアスなテーマを描きながらも、この作品が暗くならず、むしろ明るい希望を感じさせてくれるのは、逆境をチャンスに変えて、夢を叶えた作者のサクセスストーリーになっていることも一つの要因だと思うのです。

 

命の代わりに失くしたものは、たいして重要なものじゃない

ペンを握る手の写真

反射率 0.39さんによる写真ACからの写真

 

普通はガンになったというコトだけでも、精神的にキツイのにさらなる試練が作者を襲います。

 

抗がん剤の副作用で「末梢神経障害」を発症し、手先がしびれてペンがうまく持てなくなってしまいます。

 

マンガを描くには致命的な障害、と思いきや作者は「今まで覚えた絵の描き方は一度すべて忘れよう」とペンの握り方から変えていくのです。

 

そして、こう言います。

 

命の代わりに失くしたものは

たいして重要なものじゃない

僕は生きてる

何度でも

どこからでも

やり直せる

病気で失うものって色々あると思う。でも、失くしたものを嘆いていても一歩も前に進めない・・・

 

ワタクシゴトで恐縮ですが

 

舌癌で舌の半分以上を切除し、足の筋肉を使って再建手術はしたものの「食べること」「言葉を発すること」そういった当たり前だったことがうまく出来なくなってしまいました。

 

このコミックの中にも書いてありますが、

 

「病気が治っても 元通りの体に戻るわけじゃない」のですよ。

 

それでも!

 

自分に残された体は、今のこの体一つだけなのだから、この先、どうやってこの体で食べたり、話したりしていけばいいのか、それを考えるしかないんですよね。

 

それに、舌の半分以上を失くしてしまったけど、その代わりに生き延びるコトができた!

 

生きてさえいれば、チャレンジもできるし道も開けるというもの。

 

命の代わりに失くしたものはたいして重要なものじゃない

 

本当に、その通りだと思いました。

 

夫婦の絆、人の絆

カップルの影の写真

7729UGさんによる写真ACからの写真

 

入院中、抗がん剤の副作用によるストレスが溜まりにたまって、遂には奥さんに対して

「見舞いになんか来んな!!

来んなっ 来んなっ

もう来んなっ!!」

と感情を爆発させてしまいます。

 

そして数日後

 

再び見舞いにやってきた奥さんが作者に言います。

 

「かず君(作者のこと)が言った『来るな来るな』っていうのは

『助けて助けて』ってことだと思った」

 

奥さんのその言葉を聞き、作者は今までの辛い思いを吐露して奥さんの胸で涙を流して泣きじゃくります。

 

癌•••に限った話ではないと思うのですが、病気になった時って、身体に対する治療と同じくらい、心のケアというか心の支えが必要だと思うんですよね。

 

と言うよりも、周りの人たちの励ましや優しさが何よりの薬になることがあるように思います。

 

この作品の中では、そうやって夫婦が助け合って、支え合って病気を克服していく姿だけでなく、入院患者どうしが励まし合う姿や医師 、看護師との関係などが描かれていて、改めて「人は、人との関係の中で生かされている」ことに気づかされます。

 

再びワタクシゴトで恐縮ですが。。

 

私、癌の再発転移が見つかって再手術を受けた後、放射線治療抗がん剤治療を受けたんですね。

 

副作用というか、放射線治療のダメージが結構ツラくて、これで元気になれる!とはとても思えない状況が長くつづきました。

 

体のダメージはいうまでもなく、精神的にすごく追い込まれているような気がして、病棟の看護師さんやドクターの皆さんに反抗してみたり、言いつけを守らなかったり今から思えば随分と子供じみた態度をとってしまいました。

 

改めてこのシーンを読み返すと、感情を奥さんにぶつけてしまった著者の姿とあの時の自分の姿が少しダブって見えました。

 

最後に・・・

本の写真

チョコラテさんによる写真ACからの写真

 

「人間は出逢うべき人には必ず逢える。一瞬遅からず一瞬早からず」

 

哲学者、森信三の言葉ですが、人に限らず物や本にも当てはまるんじゃないかなぁ、と。

 

友人がブログでこの本を紹介した数年前にこの本を手にとっていても、多分、「いい話だな」とか「感動した!」みたいな当たり前の感想しか持てなかったんじゃないかって思うんですよね。

 

自分がガンになって手術や入院生活を経験したからこそ、肌感覚で分かることもあるし、共感できることもある。

 

きっと、私にとってこの本を手に取るべきタイミングはあの時ではなく、まさに「今」だったんだろうな、と思うのです。